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生活防衛費ができたら、投資の始めどき? 資産運用を超ビギナーにもわかりやすく解説!

2023年11月、ファイナンシャルプランナーの黒田尚子先生が新刊を出版されました。タイトルは『マンガでわかる お金に人生を振り回されたくないから超ビギナーが今すぐやること教えてください』(主婦の友社)。「お金について何から考えたらいいのだろう」「貯金を増やしたいけれど、どこから手をつけていいのかわからない」……そんな初心者中の初心者、“超ビギナー”向けに、マンガを交えながらお金を自分らしく使う知恵と方法を具体的に紹介している一冊です。
 
前回に引き続き、本の中からさらに詳しくお聞きしたい点を編集部がピックアップして黒田先生にお尋ねしました。ぜひ、参考にしてください。
 
*前回はこちら↓

※本記事は、お金に関する知識の提供を目的としています。特定の商品の売買の勧誘を目的としたものではありません。金融商品を購入する際は、商品の特性等を十分理解したうえで、ご自身の責任と判断で行ってください。
※本記事の投資に関する情報は、公開情報などから引用したものであり、情報の正確性などについて保証するものではありません。


 目的別に口座を使い分けよう


──『マンガでわかる お金に人生を振り回されたくないから超ビギナーが今すぐやること教えてください』には、今日から実行したくなる方法がたくさん紹介されています。中でも興味を持ったのが、「目的別に3つの口座を持つ」というトピックです。貯蓄をするにはやはり、複数の口座を使い分けるべきでしょうか?
 
黒田:貯蓄をするなら、目的別にお金の置き場所を分けるのがおすすめです。具体的には「使う口座」「貯める口座」「増やす口座」の3つの口座を使い分けます。
 
「使う口座」は、給与が振り込まれる口座ですね。生活費や水道光熱費など口座引き落としとなっている支払い等にあてますが、給与が振り込まれたらすぐにこの口座から「貯める口座」に貯蓄分を移しましょう。余った分を貯蓄するという発想では、お金はいつまで経っても貯まりません。先に貯蓄分を確保する「先取り貯蓄」は鉄則です。お金の使いすぎを抑えるストッパーにもなりますから。普通預金から定期預金や貯蓄預金などの口座にお金が自動的に振り替える形にしておくと便利だと思います。

ファイナンシャルプランナー・黒田尚子さんの写真
黒田尚子さん

──「増やす口座」は投資のための口座ですよね。投資に回すお金の余裕がまだない場合は、どうすればいいでしょう。
 
黒田:「増やす口座」を設けるのは、「貯める口座」に生活防衛費、つまり3〜6ヶ月分の生活費が確保できてからでも構いません。まずは「使う口座」「貯める口座」の2つを使い分けることからスタートしましょう。それから、自分が描くライフプランに沿って、何のために貯めるのかという目的を持ってください。
 
──なるほど、お金を貯めることはライフプランありきで考えないといけないんですね。
 
黒田:そうです。お金を増やすこと自体を目的にするのではなく、住宅購入や子どもの教育資金などの個々のライフプランに応じた目的を持ってお金を管理しましょう。さらに言えば、何のために貯めるかという「目的」や貯める目標となる「金額」、そのお金が必要となるまでの「期間」を明確にすることが大切です。お金と人間の幸福度には相関関係がなく、お金を貯めることが人生の目的になっている人は不幸というアンケート調査の結果もあります。老後資金のために貯めるのもいいですが、それではちょっとモチベーションも保ちづらいでしょう。
 
もし、いま特に目的がないという方には、「まずは100万円といったキリのいい数字を目指して貯めてみませんか」とアドバイスをしています。海外旅行や留学、資格取得、引っ越し、転職など、まとまったお金ができることで、やりたいこと、できることの選択肢が広がることもあります。


保険は必要なときに必要な分だけ契約しよう


──保険に入るタイミングについても、超ビギナー向けのアドバイスをいただきたいです。20〜30代は、結婚や妊娠・出産などライフステージの変化がある人も多い時期ですが、健康に対する危機意識はそれほど高くない人もいると思います。結婚や出産の予定が当面ない人も含めて、どのようなタイミングで保険を検討したらいいですか?
 
黒田:保険というのは、必要なときに必要な分だけ契約するのが一番。「必要な分」を知るためにはまず前提として、自分がどのような給付を受けられるのかを把握しておくことが大切です。いま健康であっても、人はいつ病気になったりケガをしたりするかわかりません。会社勤めであれば、病気やケガをしたときに公的保険や勤務先からどれくらい給付がもらえるのかを、まずは確認してみましょう。
 
日本は公的保険が手厚く、医療費の自己負担額は1〜3割。1ヶ月の医療費が一定額を超えると高額医療費制度も利用できますが、入院時の個室代(差額ベッド代)や食事の一部については全額自己負担です。一人部屋の個室代の平均は約8,000円※。20日間入院すると16万円もかかります。貯金がない人にとっては決して小さくない負担ですよね。会社員と違って傷病手当金などがない、フリーランスや非正規雇用の方ならなおさらです。

※出典:厚生労働省 令和3年9月「中央社会保険医療協議会 総会(第488回)主な選定療養に係る報告状況」

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──貯金がない人、受けられる保障が少ない人ほど、前向きに保険の検討をした方がいいんですね?
 
黒田:そのとおり。日本の場合、医療保険や医療特約の世帯加入率が9割を超えるなど、おそらく多くの人が何らかの保険に加入しています。なかには、必要保障額に比べて過剰なほど保険を契約している人もいるとは思いますが、だからといって保険がすべてムダとはいえません。もしものときに自分は金銭的に乗り越えられるのかを客観的に考えて、必要だと思ったらそのときが保険を契約するタイミング。いまの自分に保険が本当に必要なのかを把握した上で、金額などを検討しましょう。
 
公的保険や高額療養費制度についてはこちらの記事でもお伝えしていますので、チェックしてみてくださいね。


なかったことにできる金額を投資して「忘れる」


──投資についてのパートも非常に参考になりました。主人公のミサキちゃんはインデックスファンドを選んでいましたが、超ビギナーは何を基準に投資を考えたらいいでしょうか。
 
黒田:投資のリスクをゼロにすることはできませんが、リスクを減らすことなら可能です。超ビギナーさんは「長期・積み立て・分散投資」を心がけて投資しましょう。具体的にはやはり、株価などの指数に連動する投資信託がおすすめですね。
 
投資信託の数は6,000本近くありますが、この中から約200本が金融庁の「つみたてNISA対象商品」に指定されています。このリストの大半を占めているのが、株価などの指数に連動したインデックスファンド。長期の積み立て投資にはぴったりです。
 
──投資する金額についてはどのように決めたらいいでしょうか?
 
黒田:正解はありません。ただし、例えば、現在25歳で、65歳まで40年間で老後資金として2,000万円を準備したい場合、毎月の投資額は、3%で運用するなら2万1,600円。5%で運用するなら1万3,000円です。投資を早くスタートさせた方が毎月の投資額は少なくて済みます。そして、その上で投資をしていることを「忘れる」ことです。
 
──本にも出ていた「Start & Forget(早く始めてほったらかし)」ですね。
 
黒田:そうです。上がったとか下がったとか、変動で一喜一憂しないよう、ただ愚直に積立を続けること。気が付いたら、すごく増えてたという状態がベストです。どうしてもリスクが気になる、リスクは避けたいという方は、安全かつ確実な財形貯蓄(給料から一定額を天引きして積み立てられる制度)を選びましょう。

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──前回のお話にも出ましたが、2024年1月からNISAの制度が変わるんですよね。
 
黒田:はい。現行NISAでは年間投資枠が40万円のつみたてNISAと、120万円の一般NISAのどちらか一方しか選べませんでしたが、新NISAでは、さきほどお話しした「つみたて投資枠」が年間120万円、上場株式などが購入できる「成長投資枠」が240万円に増えました。しかも、両方使うこともできるんです。年間投資額の上限も現行の3倍の計360万円に増額されました。
 
生涯で投資できる額も大きくなりますよ。これまで、つみたてNISAの最大投資枠は20年間で計800万円、一般NISAでは5年間で計600万円でしたが、新NISAの非課税保有限度額は1,800万円(うち成長投資枠は1,200万円)に設定されました。夫婦で投資すれば3,600万円ですから、これは使わない手はありません。少額からでもできますから、投資に回せる余裕があれば、まずは一歩踏み出して始めてみてくださいね。
 
──リスクをうまくコントロールしながら始めたいと思います。ありがとうございました!


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<クレジット>
取材・文/三田村蕗子
撮影/村上悦子

<プロフィール>
黒田尚子(くろだ・なおこ) 1969年富山生まれ。立命館大学卒業後、1992年(株)日本総合研究所に入社。1998年、独立系FPに転身。現在は、各種セミナーや講演・講座の講師、新聞・書籍・雑誌・ウェブサイトへの執筆、個人相談等で幅広く活躍。2009年12月に乳がんに罹患し、以来「メディカルファイナンス」を大テーマとし、病気に対する経済的備えの重要性を訴える活動も行っている。CFP® 1級ファイナンシャルプランニング技能士、CNJ認定 乳がん体験者コーディネーター、消費生活専門相談員資格を保有。
●黒田尚子FPオフィス