若い人に伝えたい、広い視野でのお金の使い方【FP黒田の人生相談】
子どもにはしっかりと自立して生きられるようになってほしい。そう考える親御さんも多いかもしれません。
今回の相談者さんも、この春に大学を卒業されたお子さんへ、お金との付き合い方を若いうちから身につけてほしいと考えています。でも、お子さんはアルバイトをしたことがなく、相談者さんご自身も一人暮らしをした経験はゼロ。
そこで、黒田先生が現実的で身の丈にあったお金との付き合い方をレクチャーします。果たしてその内容は……!?
お金との付き合い方の基本の“き”
まずは、お子さまが晴れて社会人になられたこと、本当におめでとうございます。大変な時代ではありますが、喜ばしい限りです。
いずれは一人暮らしをしたいというお子さまの自立心はとても健全だと思います。
お金との付き合い方について押さえてほしいポイントは、お金は「稼いで、使って、貯めて、増やす」ものだということです。
節約するのも大事ですが、まずはどう稼ぐかを学び、稼いだお金をどのように使うのかを考えてほしいと思います。
強制貯金で貯めるクセを身につける
ここからは、私から社会人1年目のお子さまへの具体的なアドバイスをお伝えします。
まずは社会人としての基本、自分で稼ぐようになったら、そのお金をどう使うかを考えることが大切です。何にお金を使うかは、どういう人生を送りたいかに直結しています。
そのためには、自分のお金の流れがわかる家計簿をつけるのが一番。
家計簿が習慣になれば、毎月使えるお金を把握して、その中でやりくりする術を体得できます。
いまは家計簿アプリもいろいろとあるので、そうした便利なツールを利用しながら、やりくりのコツを覚えてください。
「貯めるクセ」も早いうちに身に付けてしまいましょう。金額としては、収入の15%、できれば20%を目標にします。
ここで重要なポイントは、強制的に貯金をすること。「余ったら貯める」やり方では、お金を貯めるのは、なかなか難しいです。可能であれば、会社の財形貯蓄や積立制度を利用するのがおすすめです。給与から天引きされる強制貯金であると同時に、利率も有利に設定されていることが多いからです。
つみたてNISAなどを活用するのもいいですね。最初に貯蓄分が引かれた金額で生活をして、いつのまにか貯金額が増えていく。そうしてお金を増やす喜びをまずは体験してみてください。
勉強を続け、自己投資しよう
お金の使い方については、生活に必要なモノを買うだけでなく、自分への投資もお忘れなく。
勉強は学校を卒業したらおしまい、ではありません。勉強は一生続けるもの。私自身、社会に出てからの方がより一層勉強しています。
では、何を勉強すればいいのか。学校で学んだことをそのまま勉強し続けるのもいいですし、資格を取るために勉強するというのもアリでしょう。大事なのは、自分の中に「引っ掛かり」があるものを探すことです。
「この分野についてもっと知りたい」「何だかこのテーマに関心がある」「仕事ではすぐに役立たないかもしれないが、この資格を取ってみたい」……何だって構いません。
勉強を続けることは自分を高めること。社会人としてのブランディングにも役立ちます。
会社に入ってすぐは、仕事を覚えるのに精一杯で、ほかのことを勉強する時間や余裕もないかもしれませんが、自分の中に芽生えた「引っ掛かり」には正直でいてくださいね。
気になることややってみたいこと、もっと知識を深めたいこと。自分の興味や好奇心、探究心に自覚的であってほしいと思います。
相互扶助の考え方でお金を使う
消費するときにSDGsの考え方を取り入れてみる。これも私からのアドバイスです。
SDGsとは「Sustainable Development Goals(持続可能な開発目標)」の略称で、国連が定める国際目標のこと。貧困や飢餓、ジェンダー平等など、17の目標が掲げられていますが、難しく考える必要はありません。
例えば、スーパーマーケットに行くと、賞味期限に近い商品が50%オフで売られていることがありますよね。そういった商品を買うことはフードロスをなくすことにつながります。立派なSDGsの目標に沿ったお金の使い方です。
買い物の際に、エシカル(倫理的)消費を心がけるのもおすすめです。これもSDGs同様、堅苦しく考えず、自分のできる範囲でトライしてみましょう。地元の商品を買うようにすれば、地域経済を支援できます。フェアトレード製品を購入する、あるいは障がい者の支援につながる商品を買うのもエシカルなお金の使い方です。
目先の利益を追いかけるだけではなく、もっと大きな視点で考えてみる。
いまはインターネット上で行われている寄付やクラウドファンディングを通して、人や会社、ブランドなどを気軽に応援できるようになりました。
できる範囲で、「自分以外」のモノやコトも意識してお金を使ってみるのも経験です。
社会人になりたての頃はまだ収入も少なく、毎月の生活に追われがちですが、そんなときでも頭のどこか片隅に「SDGsな買い物」「エシカルな消費」をインプットしておき、できるだけアクションに移してみましょう。
困った人を助けたり、誰かを応援したりという行為は、回り回って自分に返ってきます。
お互いに支え合って生きていける、そんな社会にできたら素敵ですよね。相互扶助の考え方に基づいた行動はその第一歩。
自分への投資もしながら、誰かを助け、応援するためにもお金を使ってくださいね。
<クレジット>
取材/ライフネット生命公式note編集部
文/三田村蕗子
撮影/村上悦子