ひとり親家庭を支えるさまざまな制度──「マル親」とは
母子または父子だけで生活をする家庭のことを「ひとり親家庭」または「ひとり親世帯」といいます。離婚や未婚にかかわらず、その数は少しずつ増え、また、経済的に厳しい暮らしをしている人が多いのも事実です。
今回は、ひとり親家庭を支える行政のサポートや制度についてご紹介します。
データで見る、ひとり親家庭の生活の状況
ひとり親と未婚の子どものみの世帯は、年々増えています(図1)。
▼図1
母子世帯の生活意識を見ると、他の世帯に比べて「苦しい」と感じる割合が多い傾向にあります(図2)。
▼図2
貯蓄がない(できない)母子世帯も、珍しくありません(図3)。
▼図3
こうした、いわば「生活が苦しい」状態のひとり親家庭に対して、国や自治体はさまざまな助成制度を用意しています。子育て・生活支援、就業支援、経済的支援等々、子どもを育てる親を支援することは、すなわち、子どもを貧困から救うことにもつながります。そのため、ひとり親家庭になったからといって、生活ができないほど困窮しないで済む支援を国や自治体も用意しているのです。
ただ、実際にどのような支援や助成制度があるのかを知らずにいるひとり親家庭の人もいるでしょう。こういった社会保障は、ともすると「難しい」と敬遠されがちですし、残念なことに自分に必要な制度を誰かが教えてくれるわけでもありません。しかし、今はインターネットがあれば情報にたどりつける時代でもあります。
ひとり親になってしまった、これからひとり親になるかもしれない、ひとり親をあえて選択した……どのような理由でも良いのです。まずは、ひとり親でも生きていける、自立していける制度があることを知り、必ず「情報はある・支援はある・どうにかできる」という希望と覚悟を持ちましょう。
ここからは、ひとり親のための支援や制度等をご紹介していきます。
ひとり親になったら、まずはお住まいの自治体に相談を
ひとり親になった場合に、まず対処すべきなのが生活と子どもにかかるお金のことです。すぐに仕事が見つかればいいですが、そうもいかないのが現実。子どもが小さければ小さいほど、育児と就労の両輪を回すのは難しいことも多いでしょう。そのため、まずは自分の住んでいる自治体にどういった支援制度があるのかを聞きましょう。
たとえば「○○市 ひとり親」のように、住んでいる地域名と「ひとり親」という言葉を組み合わせてネットで検索すると、どこに相談に行けばよいのか見つけやすいですよ。
ひとり親への手当や給付金は大きな味方 自立のためにも活用を
就労状況や所得額、住まいの状況等で使える制度は異なりますが、ざっと挙げるだけでも以下のようなものがあります。
また、所得税や住民税が減免されたり、国民年金や国民健康保険の免除、交通機関の割引や上下水道代の免除、非課税世帯ならば保育料金の免除・減額を受けられたりする場合もあります。
これらをすべて個人で把握するのは難しいですよね。自治体の窓口や「ひとり親家庭福祉協議会」のようなエキスパートに少しでも早く相談しましょう。
ひとり親の医療費をサポートする「マル親」
今回焦点をあてるのはひとり親家庭等医療費助成制度、通称「マル親」です。お住まいの自治体窓口に申請し、所得や生活保護の有無などの条件を満たして適用された場合に利用できるものです。
東京都の場合、マル親が適用されると、通常は3割負担である医療費が1割負担となります。ひと月あたりの負担上限額は、通院の場合は18,000円、入院の場合でも57,600円です。さらに、住民税非課税の家庭ならば、健康保険が適用になる医療費はすべて無料になります(図4)。
▼図4
※1 計算期間(毎年8月1日から翌年7月31日まで)において、月の外来療養に係るマル親自己負担額の合計が144,000円を超えた場合、超えた分を高額医療費として助成
※2 世帯合算後(通院含む)の上限額
※3 過去12ヶ月以内に3回以上、上限額に達した場合は、4回目から「多数回」となり、上限額が44,400円にさがります。
万一入院しても、上限を抑えられますので安心です。なお、この制度は「親」も「子」も対象になります(適用には所得制限などの条件があります。詳しくはお住まいの自治体のウェブサイトや窓口でご確認ください)。
子どもが生まれると、乳幼児医療費助成が適用され、子どもが一定の年齢になるまでは無料で医療を受けられることが多いため、子どもの医療費助成制度は割と知られていますが、親も対象になるひとり親家庭等医療費助成制度(マル親)の認知度はそこまで高くありません。
ご自身がひとり親でなくても、もし、親族や友人にひとり親として子育てをしている人がいたら、ぜひ、自治体に相談に行くこと、そして、マル親のような助成制度があることを伝えてあげてください。
<クレジット>
文/ライフネット生命公式note編集部
編集/年永亜美(ライフネット生命公式note編集部)