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確定申告ってなに?! もしかして私も申告が必要?

社会保険労務士(社労士)でもあるファイナンシャル・プランナーの中村薫先生が教えてくれる「だれも教えてくれなかった社会保障」シリーズ。収入がある人ならほとんどの方に関係がある確定申告について、中村先生に教えてもらいましょう!

【今回のポイント】
・なんとなく聞けない……「確定申告」ってなに?
・確定申告すると税金が還付される可能性があるのはどんな人?
・昨今流行りの「ポイント」に税金はかかるのか?!

毎年2月ごろから街のあちこちのポスターや垂れ幕で「確定申告」という文字を見かけるようになりますね。経験がない人にはピンとこないかもしれませんが、実は社会に出ている人、収入がある人ならほとんどの人に関わりがあるって、知っていましたか? 今回は社会人として知っておきたい確定申告の概要を紹介します。

※専門的な用語をできるだけわかりやすい用語に置き換えています。また、詳細な説明を省略しているため、すべての要件などまで触れていません。
気になることがあるときはお住まいの管轄の税務署や税理士等の専門家へご相談ください。詳細は国税庁ホームページ確定申告特設サイト等からも確認できます。


なんとなく聞けない……「確定申告」ってなに?


今回は経験がない(主に会社員や主婦(夫)などの)人も、確定申告とはどんなものなのか? 申告すると税金が還付(かんぷ)される可能性があるのはどんな人か、といったことを理解していただくのが目標です!

概要ですからそんなに細かく難しいことは言いません。でも、一通り読んでおくと、人生の中で役立つ場面もあるかと思います。

まず名前から見ていきましょう。「確定申告」では何を「確定」するのかというと、究極的には「昨年1年間(1月1日から12月31日まで)の税金はいくらか」です。
それを税務署へ「申告」するので、「確定申告」といいます。
申告期間は原則として、2月16日から3月15日までの1ヶ月間です。
※年によって日付がずれることもあります。正式な期間については国税庁のサイトをご確認ください。

上で「ほとんどの人に関わりがある」と書いた理由は、日本に住んでいて何らかの収入がある人は、その利益の程度に応じて税金を負担する必要があるためです。

「え? でも私やったことないよ?」

という疑問の声も聞こえてきそうですね。
実のところ、15歳以上の人は日本に約1億人もいますから、全員が短期間に税務署に殺到するとさすがにパンクしてしまいます。なので「本人が確定申告しなくても良いですよ」という人もいるのです。

代表的なのは会社員です。会社が「年末調整」をしてくれるため、確定申告をしなくても良いことになっています。公的年金を受け取っている世代の多くも不要です。


確定申告すると税金が還付される可能性があるのはどんな人?


ただし、会社員でも確定申告する必要がある人もいますし、逆に本来しなくても構わないけれど、申告することで払いすぎていた税金が戻ってくる人もいます。

例えば、代表的なのは以下のようなケースです。

1.     生命保険や地震保険を契約して保険料を支払った
2.     結婚したり子どもが生まれたりして扶養親族が増えた
3.     iDeCo(個人型確定拠出年金)を始めた
4.     住宅ローンを組んだ最初の年
5.     ふるさと納税をした
6.     医療費がたくさんかかった
7.     配当金や分配金を受け取った
8.     株式等の投資で損をした
9.     2か所以上から給与をもらっていて、メイン以外の所得合計が年20万円を超える
10.  給与収入が年2,000万円を超える
11.  災害や盗難などで損害を受けた

それぞれのケースについて簡単に解説していきます。

(1)生命保険や地震保険を契約して保険料を支払った(2)扶養親族が増えた(3)iDeCoを始めたといった場合は、会社員なら年末調整で済むのですが、年末調整に間に合わなかった場合は改めて確定申告をすることで税金の還付を受けられる場合があります。

(4)の住宅ローンを組んだ場合は、一度手続きをすると確定申告をしなくても年末調整で済みますが、最初の年だけは確定申告が必要です。

(5)ふるさと納税をした場合は、ワンストップ特例*を使えるときは特に確定申告は不要ですが、使えない場合は確定申告が必要です。

*ワンストップ特例…確定申告の不要な給与所得者等がふるさと納税を行った場合、ふるさと納税先の自治体が5団体以内で、各ふるさと納税先の自治体に特例の適用に関する申請書を提出すれば、所得税の確定申告をせずに、住民税からふるさと納税の寄附金控除を受けられる制度。(参考:総務省ウェブサイト

(6)医療費がたくさんかかった場合は、「医療費控除」や「セルフメディケーション税制」というものです。これはかなり多くの方が該当する可能性がありますので、次回にもう少し詳しくお伝えします。

(7)配当金や分配金を受け取ったとき(8)株式等の投資で損をしたときも、本来は確定申告不要(8は「特定口座(源泉徴収あり)」の場合)ですが、確定申告すると払いすぎていた税金を取り戻せる場合があります。
ただし、申告することで配偶者控除などが受けられなくなる場合や、国民健康保険の所得区分が変わる場合もあります。メリットがあるかどうか、申告前に税務署や税理士などの専門家に確認することをおすすめします。

(9)ダブルワークや副業をしていて一定以上の収入がある人(10)給与が高い場合は、年末調整では正確な計算ができないため確定申告が必要です。

(11)災害などで大きな負担があった年は、いくら給与や収入があっても税金を負担するのが難しい場合があります。そういった大変なときは確定申告で「災害に関連したやむを得ない支出があります」と申告することで、控除を受けられます。
 
確定申告の制度は年度ごとに更新されていきます。申告の対象となる方が変更になることもありますので、国税庁のウェブサイトを確認してみてください。


昨今流行りの「ポイント」に税金はかかるのか?!


お買い物をすると1円で1ポイント、などのように受け取れるポイントがありますよね。ポイントにも金銭的な価値がありますから、ポイントを受け取ったら利益を得たことになります。
 
確定申告の目線で言えば「一時所得があった」ということになりますが、個人は基本的には申告する必要はありません。

ただし、次回紹介する医療費控除セルフメディケーション税制を利用する場合は注意が必要です。
 
*後編はこちら↓

<クレジット>
●なごみFP・社労士事務所 中村薫

<プロフィール>
中村薫(なかむら・かおる)1990年より都内の信用金庫に勤務。退職後数ヶ月間米国に留学し、航空機操縦士(パイロット)ライセンスを取得。訓練中に腰を痛め米国で病院へ行き、帰国後日本の保険会社から保険金を受け取る。この経験から保険の有用性を感じ1993年に大手生命保険会社の営業職員となり、1995年より損害保険の代理店業務を開始。1996年にAFP、翌年にCFP®を取得し、1997年にFPとして独立開業。2015年に社会保険労務士業務開始。キャリア・コンサルタント、終活カウンセラー、宅地建物取引士の有資格者でもある。

※こちらの記事は、ライフネット生命のオウンドメディアに過去掲載されていたものの再掲です。