国民年金の保険料、払えなかったらどうしたらいい?!
社会保険労務士(社労士)でもあるファイナンシャル・プランナーの中村薫先生の「だれも教えてくれなかった社会保障」シリーズ。今回は国民年金の保険料が払えないときの制度について。メリットやデメリットもしっかり教えてもらいましょう!
今回は、どうしても国民年金の保険料を払えないときはどうしたら良いかをお伝えしましょう。
年齢や収入などによって選べる制度が違います。デメリットもありますので、しっかり確認して自分に合った方法を選んでください。
※専門的な用語をできるだけわかりやすい用語に置き換えています。また、詳細な説明を省略しているため、すべての要件まで触れていません。
※国民年金に関する最新情報については日本年金機構のウェブサイトをご確認ください。
国民年金保険料の「免除」制度と「納付猶予」制度の違い
国民年金の保険料が2年以上支払えないと、その期間の分の年金の受給資格がなくなってしまいます。年金の額が減ったり、障害年金や老齢年金などの年金が受け取れなくなったりする可能性もあるのです。
これを防ぐために、「保険料免除制度」と「保険料納付猶予制度」があります。
この2つの制度の大きな違いは、もしも免除や納付猶予の制度を利用しても保険料が支払えなかった場合、年金額が減るか、ゼロになるかというところです。
この大きな違いを頭に入れて、さまざまな場合にどちらの制度を使うか考えてみてくださいね。
失業・退職をして収入がないから払えない!という場合
失業などで収入がなくなった場合は「保険料免除制度」か「保険料納付猶予制度」を利用します。
◆保険料免除制度を利用する場合
保険料免除制度は、所得により保険料が免除される額が違います。全額免除、3/4免除、半額免除、1/4免除の4段階です。
ただし失業したときに自動的に免除されるわけではなく、申請手続きが必要です。
「これは誰が見ても保険料を払うのは大変だね」とわかってもらう必要があるため、審査では所得確認があります。
保険料を負担する義務があるのは原則本人ですが、配偶者や世帯主にも連帯して義務があるため、通常は自分だけでなく、配偶者の所得や世帯主の所得確認も必要になります。(例:失業した夫婦と世帯主である親が同居していた場合は、親の所得も関係します)
そして本題。
失業などの場合は所得確認に特例があります!
雇用保険受給資格者証などで失業が確認できると、本人の所得はないものとして判断されるのです(配偶者がいる場合はその所得で判断)。
一人暮らしなら本人が世帯主ですから免除を受けやすいといえます。
自営業者が廃業等をした場合も、この特例の対象です。
該当しそうなときは市区町村の役所・役場や年金事務所に相談してみましょう。
なお、夫婦とも国民年金に加入している場合は、配偶者の免除申請手続きも忘れないようにしましょう(妻が厚生年金加入のときは所得審査には関係がありますが、厚生年金保険料は免除になりません)。
◆「保険料納付猶予制度」を利用する場合
納付猶予制度を利用する場合も、同じように所得確認があります。こちらも申請が必要です。
表1 所得確認の範囲(✔が付いている人の確認が必要)
表2 免除を受けるための所得の目安 (カッコ内は収入額)
50歳未満で、収入が少ないから払えない場合
50歳未満なら「納付猶予」制度を検討しましょう。 本人と配偶者の所得のみで判断されるため、親と同居の場合も利用しやすい制度です。
学生だから払うのが難しいという場合
「学生納付特例」制度は大学、大学院、短大、高等学校等の学生が利用できます。20歳~60歳までの間で在学中であれば、保険料を猶予してもらえます。ただ、納付猶予制度と同じく、保険料を支払わなかった期間の年金額がゼロになるため、卒業したら保険料を支払う心づもりでいてくださいね。
学生なら自動的に免除されるわけではなく、申請手続きや所得確認も必要になります。
所得確認は本人だけですから、仮に結婚していたり親と同居していたりしていても制度を利用しやすいのが特徴です。ただ、アルバイトなどで収入が多い学生で、免除が通らなかったケースもあります。
免除が認定されなかったときは、保険料を払わないと未納になってデメリットを被ります。どうしても保険料を支払うのが難しいときは、一部納付など他の制度も検討しましょう。
表3 学生納付特例の所得の目安
その他の免除、猶予制度
①生活保護や障害年金を受けているとき
生活保護を受けている場合や1級または2級の障害年金を受けている人は保険料が全額免除される「法定免除」を利用できます。
利用する場合は「届け出」だけは必要なので忘れずに手続きしましょう。
注意点:生活保護にはさまざまな種類がありますが、生活扶助を受けている場合に対象になります。
②出産前後の免除は積極的に活用!
新たに平成31年度から始まった「産前産後期間の免除」制度はぜひ活用しましょう。
これは出産前月から、出産月の翌々月までの4ヶ月の保険料が免除される制度です(多胎妊娠の場合は出産3ヶ月前から6ヶ月)。
他の制度と違い、後から保険料を払う必要はありませんし、老後の年金額が減ってしまうこともありません。デメリットがないため平成31年2月以降に出産した女性で、まだ利用していない場合は住所地の市区町村の役所・役場の国民年金課で相談してみましょう。
これは国民年金保険料を払っている女性のための制度です。
厚生年金加入中の女性には別の制度がありますし、夫が会社員で扶養に入っている妻(いわゆる3号被保険者)はそもそも保険料を負担していないためこの制度の対象ではありません。
「免除」と「納付猶予」の違いとメリット、デメリット
いろいろな制度を紹介しましたが、産前産後の免除制度以外はデメリットがあるため要注意です。
重要な注意点はデメリットの違いです。
各種免除制度と納付猶予制度、どちらも選べる状況であれば、年金額に反映される「免除」の方を選んでおいたほうが良いです。
各種免除制度は免除を受けていた期間について、半分以上(利用した制度により異なります)は年金額に反映されます。
いっぽう納付猶予と学生納付特例の期間は、保険料を納めなかった場合の年金額はゼロですから、後日保険料を納めてできるだけ穴を埋めておいたほうが良いのです。
おわりに
公的年金の基本は助け合いの保険制度です。
保険料を払っていなかった人
加入していなかった人
は、受け取りたいときにお金を受け取れません。
やむを得ず保険料を払えないときは、必要な手続きをして、もしものときに権利を使えるようにすることが大切です。
※専門的な用語をできるだけわかりやすい用語に置き換えています。また、詳細な説明を省略しているため、すべての要件などまで触れていません。
自分が各種制度を利用できるかどうか気になったときは、日本年金機構のサイトを参考に、市区町村の役所・役場や年金事務所に相談されることをおすすめします。
<クレジット>
●なごみFP・社労士事務所 中村薫