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医療保険選びのポイント②【保険なるほど相談室】Vol.6

「入らなきゃ、とは思っているけれどよくわからなくて……」、保険を選ぼうとしたときにそんなことを思う方もいるかもしれません。ファイナンシャル・プランナーの黒田先生にアドバイスをいただきながら、少しずつ保険のことをお伝えしていきます。

今回は、医療保険を申し込む時に決める、給付金日額と保険期間、保険料払込期間について考えてみましょう。


給付金日額っていくらにしたらいいの?


給付金日額とは、入院したときなどに受け取れる1日あたりの金額のことです。給付金日額を決めるときは、公的医療保険が適用されない自己負担額の例を確認して考えてみましょう。

自己負担額のうち、入院時にかかる医療費と食事代は、1日で約4,400円(※)。この金額を目安に給付金日額を設定すれば、最低限の備えはできそうです。また、入院中、人の話し声やお見舞いの人が来たときが心配なら、「差額ベッド代」を負担することを踏まえて給付金日額を考えてみましょう。

出典:厚生労働省 令和5年7月「中央社会保険医療協議会 総会(第548回)主な選定療養に係る報告状況」

個室への入院を前提にするのなら、入院1日あたり8,000円を目安にするのも選び方の一つでしょう。

※出典:医療費が100万円かかった場合の高額療養費給付後の自己負担額 (70歳未満で年収約370~約770万円の方)
8万100円+(100万円-26万7,000円)×1%=8万7,430円 1日あたりの自己負担額 8万7,430円÷30日=2,914円→約3,000円
全国健康保険協会 平成30年4月「入院時食事療養費」


保険期間と保険料払込期間はどう決めればいいの?


保険期間とは、保険で保障される期間のことです。一定期間だけ保障される定期タイプと、一生涯保障される終身タイプがあります。
 
定期タイプは5年や10年など、保障が受けられる期間を選びます。その期間が終わった後も同じ保障内容で保障を受けたい場合には、更新の手続きが必要です。たとえば、契約年齢が30歳のときに10年間の保険期間で契約していた医療保険を更新する場合、新たな契約では40歳の保険料での契約となります。そのため、多くの場合保険料は以前より高くなります。
 
終身タイプは保障が一生涯続き、保険料も加入時から上がることはありません。
 
短期的にみると定期タイプの保険料が安く見えますが、更新のたびに、年齢が上がるほど保険料は高くなっていきます。長い期間に渡って更新した場合は、保険料の総支払額が終身タイプを上回る可能性もあります。そのため、一定期間保障があればよい人は定期タイプで、一生涯保障がほしい人は終身タイプで備えるのがおすすめです。
 
保険料払込期間とは、保険料の支払いが必要な期間のことです。こちらも一定期間で保険料の支払いを終えるタイプと、一生涯支払いを行うタイプがあります。
 
一定期間で保険料の支払いを終えるタイプは、65歳までなどあらかじめ決めた期間、保険料を支払います。一生涯支払いを行うタイプは、一生涯保険料の支払いが続きます。
同じ保障内容で比べた場合、一定期間で保険料の支払いを終えるタイプの方が、月々の保険料は高めになります。しかし、一生涯支払いを行うタイプは65歳など定年を迎えてからも支払いが必要になります。

老後の保険料の出費を抑えたい人は一定期間で保険料の支払いを終えるタイプ、月々の保険料を抑えたい人は一生涯支払いを行うタイプを選ぶと良いでしょう。

黒田先生:
給付金日額にしろ、保険期間や保険料払込期間にしろ、とにかく保険のかけ方に「正解」はありません。
給付金日額は「5,000円」よりも「1万円」の方が、保険期間は「定期」よりも「終身」の方が安心感はありますが、その分、保険料はアップします。
また、保険料払込期間も、月々の保険料を安くしたいのであれば終身払いで長く払い続け、総支払保険料をできるだけ抑えたいのであれば、払込回数を減らして、一定期間で払い終えた方が良いでしょう。
どうも、保険に対しては、どうすれば「トクか」が気になる人が多いようですが、損得はあまり意味がありません。
確実に払い込んだ分のリターンが欲しいのであれば、貯蓄や投資をすべきです。
もともと保険は、お互いがお金を出し合い、困った人を助ける相互扶助の精神に基づいたもの。
みなさんは、公的保険に加入していますが、「おトクだから、いっぱい病院で治療を受けよう!」なんて思わないですよね?
民間保険は、個々で自由に保障内容が決められる点が異なるだけで、考え方は同じです。給付金日額や保険期間等も、どれだけなら自分にとって十分なのかをよく考えてみてください。


保険料はいくら位がちょうどいいの?


ここまで保障内容について見てきましたが、保険料はいくら位がちょうど良いのか? と気になった人もいるでしょう。

保険料は、毎月支払っても貯金などがきちんとできる金額に抑えることが理想です。もしもの時のためにと保障を手厚くしていくと、どんどん保険料が高くなっていきます。いつか来るかもしれない日のために、日々の生活が苦しくなっては本末転倒です。日本は公的保険が充実していますので、医療費が際限なく高くなることはありません。保険料と保障のバランスを取るようにしましょう。

ただし、保険料を抑えるために保障を少なくしていくと、いざという時に給付金が受け取れない、ということもあるかもしれません。保険料のために必要な保障まで削らないよう気を付けてくださいね。

黒田先生:
個々が負担できる適正な保険料は、年代や家族構成などによって異なります。
目安として、家計に占める保険料の割合について、シングル世帯は月収の4%、ディンクス世帯は5%、ファミリー世帯は8%以内とアドバイスしています。
ちなみに、生命保険(個人年金保険を含む)加入世帯における年間払込保険料の世帯年収に占める割合は、全生保で6.7%となっています(※)。
年収500万円の世帯なら、年間33万5,000円、月額約2万8,000円ですから、結構な支出ですよね?
もちろん、この保険料は、医療保険以外の保険も含めた金額ですが、一つの目安にはなるでしょう。
※出典:生命保険文化センター「令和3年度 生命保険に関する全国実態調査」

▼保険のこと、基本からゆっくりわかります【保険なるほど相談室】

<クレジット>
監修/黒田尚子
構成・文/年永亜美(ライフネット生命公式note編集部)

<プロフィール>
黒田尚子(くろだ・なおこ) 1969年富山生まれ。立命館大学卒業後、1992年(株)日本総合研究所に入社。1998年、独立系FPに転身。現在は、各種セミナーや講演・講座の講師、新聞・書籍・雑誌・ウェブサイトへの執筆、個人相談等で幅広く活躍。2009年12月に乳がんに罹患し、以来「メディカルファイナンス」を大テーマとし、病気に対する経済的備えの重要性を訴える活動も行っている。CFP® 1級ファイナンシャルプランニング技能士、CNJ認定 乳がん体験者コーディネーター、消費生活専門相談員資格を保有。
●黒田尚子FPオフィス

※こちらの記事は、ライフネット生命のオウンドメディアに過去掲載されていたものの再掲です。