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将来振り返って「やってよかった」と思えるのが積立投資。コツコツ続けるコツとは?──竹川美奈子さん

ライフネット生命の公式note編集部のメンバーが、とある20~30代の若い方とお話ししたときに気になったキーワードが、「損をしない生き方がしたい」「どこに投資したらいいのかわからない」といった声です。ファイナンシャルジャーナリスト・竹川美奈子さんは、「お金は人生を楽しく過ごすために使うもの」と語ります。インタビュー後編では、お金を「貯めながら増やす」コツを伺いました。
 
*前回はこちら↓


どんなスタンスで投資に向き合う?まずは「貯めながら増やす仕組み」づくりを


──実際に竹川さんが若い世代からよく相談されるのは、どのような悩みですか。

竹川:最近はNISA関連の質問が多いですね。「非課税投資枠は早く埋めた方がいいですか?」とか、「投資は早く始めた方がいいんですか?」とか。あるいは、まだ30代でも「漠然と不安を感じているのですが、老後資金は早めに貯めた方がいいですか?」という質問もありましたね。少し前に「老後資金は2,000万円必要」と報じられたこともありました。実際には金融審議会 市場ワーキング・グループの報告書では2,000万円必要とは言っていませんし、必要な金額は1人ひとり異なりますが、そのようなメディアの情報に不安を覚える方が多くいらっしゃるようです。

私は企業でマネープラン研修を行うこともありますが、50代よりも20~30代の人たちの方がお金に関心を持って、しっかり考えていると感じます。そういう意味では、今20代、30代の方が地道に資産形成を続けていけば、将来の選択肢は広がると思います。一方で関心のない方も一部にはいらして、数十年後に資産形成において大きな差が開いている可能性があります。

──投資のことなどお金に関して積極的に行動できる人もいれば、気後れしてなかなか行動できない人もいますよね。

竹川:そうですね。ちなみに私は2006年11月にiDeCo(個人型確定拠出年金)に加入しました。18年が経ち、だいぶ元本と運用益が積み上がってきました。このような老後に向けた資産形成、積立投資は少額で構いませんので、早いうちから長期でコツコツ続けていくことが大事。後から振り返った時に「やっていてよかったな」と思えるのが積立投資だと思います。いまはNISAが人気ですが、企業年金のない会社員やフリーランスの方はiDeCoの利用も併せて検討してほしいです。

──若い世代に向けて、どのようなスタンスで投資に臨めばよいかのアドバイスをいただきたいです。

竹川:なるべく早いうちに“仕組み化”することが大切です。働きながら資産形成をすることを考えると、積立貯蓄と積立投資を同時にセッティングするといいでしょう。

(図1)

竹川:具体的には、給料が振り込まれる生活用の銀行口座から、貯蓄用のポケット、万一に備えるためのお金など)を貯めるプール用のポケット、積み立て投資をする投資用のポケットを作ってお金を振り分ける。

竹川:具体的には、給料が振り込まれる生活用の銀行口座から、貯蓄用のポケット、万一に備えるためのお金など)を貯めるプール用のポケット、積み立て投資をする投資用のポケットを作りましょう。

お金がなかなか貯まらないという人にありがちなのは、毎月10万円ずつ積み立てしているはずなのに、貯まっては使うことを繰り返してしまって口座にはほとんど残らないケースです。この場合は、貯蓄用の口座とプール用の口座を別にしておくことが大切です。その上で、できるだけ早めに積み立て投資用の口座を作るといいでしょう。証券会社などに口座を開設し、毎月、銀行口座から毎月一定額を積み立てる仕組みをつくってしまうと継続しやすいです。

──なるほど、それならば簡単にお金を使ってしまうことがないうえに、貯蓄や投資を着実に続けることができますね。

竹川:例えば、Aさんは次のような仕組みをつくりました(図2参照)。

(図2)

Aさんの作った貯蓄・投資の仕組み図

Aさんの場合は、すべてのお金の出どころを給料が振り込まれるA銀行の口座に集約していて、クレジットカードの支払いなどもすべてこの口座にしています。
そして、A銀行からBネット銀行に8万円を移しています。そのうち、交通系ICやデビット付キャッシュカードにチャージして使う分が合計5万円(生活用)、そして3万円は貯蓄用として預金口座で貯めていきます。
投資用の口座も開設しました。Aさんは企業年金がない会社に勤めているため、iDeCoに加入していて、C証券(運営管理機関)に口座を開設し、A銀行の口座から毎月1.5万円で投資信託(投信)を買い付けています。また、C証券にはNISA口座を開設していて、こちらでも投信1.5万円を積み立てています。

これはあくまでも一例です。ご自身が利用している金融機関などを念頭に、ぜひ仕組み化の図を作ってみてください。ポイントは、生活用、貯蓄用、プール用、投資用の4つを意識して仕組みをつくることです。

幸せな人生を歩むためのバランスシートを作成


──この仕組み化を、早めにやっておくことが大切なのですね。

竹川:そうですね。仕組みをつくって、残りのお金は楽しく使えばいい、と考えると楽だと思います。そもそもお金は幸せになるために使うものですからね。
そこでもう一つやっていただきたいのが、資産と負債の状況をまとめた「バランスシート」の作成です。
いま資産と負債がどのくらいあるのか、といった現状を整理するためでもありますが、半年とか1年に1回、定点観測することをおすすめしています。リタイアに向けて、金融資産が積み上がっているか、住宅ローンが圧縮できているか、などを定期的にチェックするわけです。投資しているお金だけではなく、全体を俯瞰することが大事です。

(図3)

バランスシートの例。竹川:図3のように、左側に金融資産や実物資産などの「資産」、右側に「負債」と「純資産」の状況を書き出す。

竹川:図3のように、左側に金融資産や実物資産などの「資産」、右側に「負債」と「純資産」の状況を書き出します。金融資産は時価評価額を記入。さらに企業型DC(企業型確定拠出年金)、iDeCoなどの年金資産も加えてみてください。
右側の負債は、住宅や自動車のローン残高のように、返済しなければならない金額を書き出します。純資産は、総資産から総負債を差し引いた正味財産の金額になります。

1年単位で家計が黒字か、赤字かを見てしまいがちです。もちろん、手取り年収から支出を差し引いた年間収支はプラスになることが望ましいですが、例えば、大学院に通って一時的に年間収支がマイナスになる、ということもあるでしょう。でも、将来的に自分の価値が高まるなら、挑戦してよいのではないでしょうか。俯瞰する+長期的な目線が大事だと思います。

そして、金融資産と実物資産が十分に増えていっても、例えばリタイア後に気軽に語り合う友人がいない、健康を害して旅行に行けないという状況になってしまったら、あまり幸せとはいえませんよね。健康や交友関係、趣味、社会貢献、キャリア形成なども立派な資産です。バランスシートの資産には、金融資産だけでなく、自分が積み上げていきたいものを意識したいですね。


竹川美奈子さん
竹川美奈子さん

──竹川さんのお話を聞くと、お金は自分の好きなこと、楽しめることに使うためにあると考えられるようになって、ワクワクしてきます!

竹川:そう感じていただけるとうれしいです(笑)。以前取材でお話をうかがった60代の男性は、「せっかく生きているのにお金の心配をして過ごすのはもったいない。できれば若いうちから積み立て投資などをして、お金の心配から早く脱却し、幸せな思い出の残高をふやすことに時間を使いたいよね」とおっしゃっていました。まさにその通りだと思います。

お金をふやすことは大事ですが、どう使うかはもっと大事。今回ご紹介してきたことをぜひ実践してみてください。人生の主役も、お金の主役も「自分」です。自分がどのように生きていきたいか、どんなことにお金を使いたいかをじっくり考えてみましょう。
その上で投資をするのであれば、早いうちに少額から始めてみる。失敗してもリカバリーできますし、その経験は長期でコツコツ続けて行くための糧になると思います。漠然とした不安にとらわれず、楽しい人生を歩むためにお金の問題と向き合ってみてくださいね。

<クレジット>
取材/ライフネット生命公式note編集部
文/森脇早絵
撮影/村上悦子

<プロフィール>
竹川美奈子(たけかわ・みなこ)
大学卒業後、出版社や新聞社勤務などを経て独立。2000年フィナンシャル・プランナー資格を取得。取材・執筆活動を行うほか、投資信託やiDeCo(個人型確定拠出年金)、マネープランセミナーの講師などを務める。個人投資家の立場から金融商品・サービスの研究・分析を行うとともに、自らもiDeCoやNISAを活用、投信積み立てを実践中。近著『大改正でどう変わる? 新NISA徹底活用術』(日本経済新聞出版/2023年)のほか、『50歳から始める!老後のお金の不安がなくなる本』、『改訂版 一番やさしい! 一番くわしい! はじめての「投資信託」入門』など著書多数。
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